もり塾

3期実践コース開講! 矢印

【もり塾の歩き方(6)】取材本番。その先に待っていた壁

「もり塾ブックライター・編集ライター養成コース」第1期卒業生ノムラの体験記、好評連載第6回!
いよいよ生まれて初めてのインタビュー取材の日、私は高揚感に包まれていました。先生が同行してくださることになっていて安心感もあり、緊張感はそれほど強く感じていませんでした。

しかし……。

目次

念入りに準備。高揚感に包まれて取材現場へ

一度きりの取材。やむをえず追加取材をすることもあるそうですが、基本的には一発勝負です。

紛失や故障など想定外の事態に備えて、持ち物は必ず予備を用意します。

筆記具、ICレコーダー、カメラはスマホで代替可能。100%充電はもちろんのこと、バッテリーと充電器も準備しました。

前日には取材項目を何度も反芻して一人リハーサルに励み、補足の質問もいくつか用意しました。

いよいよ当日。

同行してくださる先生とは、アポイントの30分前に現場近くのカフェで待ち合わせをしていましたが、方向音痴の私は迷子になる可能性が大。

周囲の下見と、交通機関の遅延に備えて2時間前に取材場所の最寄り駅に到着しました。

案の定、現地は路地が何本もあり迷いやすい立地。

デジタルで調べた経路を確認しながら待ち合わせ場所からの所用時間も測定しておきました。予定通りに先生と合流し、簡単に今日の流れを確認して現場へ向かいました。

接客業で培った会話術を生かせたけれど

指定された場所は取材を受けて下さった女性の勤務先。ドアを開けると、彼女がスタッフと談笑していました。

社会的地位のある方なので厳格な風貌をイメージしていましたが、ゆるいワンピースにスニーカーというカジュアルな出立ちです。

ちょっと意外でしたが親近感と安心感が湧きました。

カウンターとハイチェアーがいくつかある、すっきりとしたラウンジに通され、あらためて挨拶を交わします。

「『もり塾』ブックライター・編集ライター養成コースで勉強中の野村です」

この日のために作った「フリーライター」と肩書きを入れた名刺。初めて名乗る「ライター」に気後れしつつも、やっとここまで辿り着いたのだと気持ちが舞い上がります。

先生が「もり塾」について補足の説明をすると、
「勉強中の人の方が違った視点があって面白いものが書けると思います」と肯定的だったので、ほっとしました。

勧められた椅子に座り、ICレコーダーとスマホを出し音声録音の承諾を求めます。
彼女が頷いたのを確認して録音を開始。

ついにインタビュー本番です。

本来なら話しやすい雰囲気を作るためにも、本題とは関係ない雑談をした後に質問に入るのがベター。

しかし、「時間内に聞かなければならないことを全部聞かなくちゃ」と焦りと緊張のあまり、いきなり質問から始めてしまいました。

すると彼女は反対意見を一言。

質問の背景に潜む社会問題に対する見解だったのですが、気さくな雰囲気から一変し力強く語ります。

想定外の展開に大慌て。なんとか気を取り直して次へつなげました。

雑誌やWebなどにも多く掲載されている方でインタビューには慣れているようでした。

一つの質問に対して比較的長くお話しをされ、沈黙が続くこともなく初心者の私は大助かり。

1時間ほど経ったころ、女性は「時間は大丈夫ですよ」と多忙なはずなのに寛大です。

その後はあまり戸惑うこともなく、予備の質問も含めほぼ予定時間内に終えることができました。

続く写真撮影で、彼女は少しはにかみながらも穏やかな笑顔を披露。

アングルや背景を変えながら10数枚ほど撮影し、画像も確認していただきました。

使命を終えてホッとしていると、先生は室内や陳列物をパシャパシャと撮影し続けます。

私は最低限必要な人物画像さえ取れればいいと撮影に遠慮してしまったのです。

後に枚数も不足、出来栄えもイマイチな画像ばかりで困る結果になるとも知らずに。

挨拶を済ませ外に出ると、日もとっぷりと暮れていました。

たった今インタビューをしてきたガラス張りのラウンジと建物のロゴの灯りが、夜の街に浮かび上がっています。

取材前には駐車車車両があって後回しにした外観撮影を終え、本日の任務は完了。

駅へ向かう途中、先生から「画像が足りない。もっと出来上がりのページをイメージしてから撮影に臨むべき」とアドバイスを受けました。

思いのほか緊張していたことを告白すると、

「大丈夫、初めてインタビューしたとは思えない」と褒めてもくださり少し安堵しました。

長年培った接客業が役に立ち、淀みなく会話を進行できたように見えたのかもしれません。

お礼を伝え、駅で分かれた後の帰り道は一人反省会。自分の未熟さに落胆しました。

私は職業柄、初対面の人と話したり会話を盛り上げたりするのは得意と自負していました。

しかし、接客では「話しかけてこちらの話を聞いてもらう」のに対し、インタビューでは「質問に答えてもらい、さらに饒舌に語ってもらう」という真逆の技術が必要と痛感しました。

接客での長い雑談は親交を深めるためのもの、こちらが意図することに応えてもらう取材とは大きく違ったのです。

インタビューを終えて文章にする。さらなる試練が始まった

インタビューという大仕事を終えて開放感に浸ったのも束の間、今度は文章に仕上げなければなりません。

まずはインタビューの音声データを文字化すること「文字起こし」をします。

要点は現場でメモを取りますが、「もう一度聞くことは、インタビュイーとの濃密な時間」と先生からのアドバイス。

取材時には気づかなかった言葉や意図が浮かび上がってくると言います。

要点のみを書き出す方法もありますが、私は初心者なので、「あー」、「えーと」、「ハハハ」などの前置きや相槌、笑い声まで一言一句漏らさず書き起こします。

1時間半の録音で、文字数も2万近くにおよび、この作業だけでも延べ10時間以上を費やしました。

これを約4000字の文章に仕上げていくのですが、

「書けない……」

PCの前で頭を抱える私。

何度録音を聞いても文字起こしを読んでも、全体の構成どころか一文も思い浮かばないのです。

取材依頼書で遅れをとっていた私は、初回原稿提出の締め切りまで猶予がなく焦る毎日。

とりあえず、話し言葉を文章らしくするという作業から始めてみました。

しかし、質問の答えが予想外の展開だったり、あちこちに話題が飛んだりしたので起承転結どころかまとめることさえできません。

「せっかく話していただいたのだからあれもこれも書きたい」と思うと、収拾がつかないのです。

文字数大量オーバー、内容はお粗末というひどい状態でしたが、どうにか締め切りに間に合わせました。初めての取材という高揚感は消え去り、文章に仕上げるという大きな壁が出現。さらなる試練の始まりに呆然とするばかりでした。

第7話私にしか書けない。だから何度でも書き直す」に続く。
2023年2月公開予定!

野村 紀美子(のむら きみこ)

アパレルメーカーで販売業務を20年。
2万人以上の女性に接客し、「ファッションは人の心を豊かにし、人生も変わる」と確信。現在は店長職を辞し、女性やサービス業の人々にエールを送りたいとライター修行中。 https://www.instagram.com/marmaidolphin
もり塾ライター養成コース卒業制作では、LOF ホテルマネジメント日本法人社長薄井シンシアさんを取材した。
予告編はこちら→ https://mori-jyuku.com/booklets-5/

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